「AI時代のソフトウェアエンジニアのお仕事とは?」株式会社ZOZO IT統括本部 技術戦略部 ディレクター 諸星一行さんによる講演

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IT業界を志す生徒にとって、プロの第一線で働く方のお話は貴重であり、日々刻々と進化するAI時代の現場で、どのような状況のもとでプロジェクトが進められるのか、気になるものです。

今回、講師としてお招きした諸星一行さんは、2019年に株式会社ZOZOに中途入社し、現在はIT統括本部技術戦略部のディレクターとして、組織を横断する技術戦略に携わっています。

「ソフトウェアエンジニアについてのお話」とはいっても、現在の諸星さんはディレクター。何かのプロダクトにコミットすることはなく、遊撃隊のようなポジションで仕事を行う一方で、実際にコードを書くこともあります。また、このような講演を通して、株式会社ZOZOの技術面での広報の役割も果たしているそうです。

まずは諸星さんのこれまでのご経歴をお話しいただくことで、IT業界でのステップアップについて考えることができそうです。

これまで築いてきたキャリアの話

諸星さんのキャリアは、現在で4社目。諸星さんは芸術学部写真学科を卒業し、1社目はWeb制作と撮影の仕事でIT業界へ進みます。2社目からは完全にITの仕事に振り切り、他社からの「受託」を中心にして行うWeb制作会社で勤務。仕事をするうちに「自社開発」へ興味が湧いたことから、3社目の会社へと移ります。

受託と自社開発の違い

「受託」は制作したものを顧客に引き渡しますが、「自社開発」では制作したものを社内で運用するなど、制作したプロダクトに対して継続的に愛情を注ぐことができる点に違いがあるそうです。

2社目はだんだんと組織が大きくなり、社員が100人を超えた段階で転職を決意し、3社目の企業へ。

3社目に勤務していた当時参加した勉強会をきっかけに、Webフロントエンドエンジニアとして声がかかり、R&D(研究開発)組織の一分野としてXRチームを立ち上げました。しかしそのチーム解散が契機となり、再び転職。

4社目となる現在の株式会社ZOZOへは、紹介を通じたリファラル採用により転職。「紹介というと有利、と思われるかもしれないですが、紹介者に保証してもらっている状態なので、その分プレッシャーを感じます」。
また、IT業界での例として、会社方針により新しい技術を学ぶ必要が出てくることがあり、その場合はそのまま転職したり、研修などを通して学習して追いついていく、ということもあり得るそうです。
諸星さん自身は「AI時代となり、過去のキャリアの話をしてもあまり意味はないかもしれない」と語りつつも、IT業界でのキャリアアップの道筋は、生徒の皆さんもきっと参考になったことでしょう。

コンピュータ・サイエンス(CS)は学んでおいたほうがよい

学生時代に学んでおいたほうがよいこととして、現ZOZOのCTO(最高技術責任者)やRubyの生みの親であるMatZ(まつもとゆきひろ氏)の発言を例として挙げ、「コンピュータサイエンス(CS)を学んでおいたほうがよい」と話します。

AI時代にエンジニアとしてどう振る舞うべきか

学ぶ方法についての例として、米国のハーバード大学によるコンピュータサイエンス入門講座である”CS50”をご紹介いただきました。これには日本語バージョンもあるとのことです。

次にAI時代のエンジニアとしてのあり方を説明してくださいました。

昨今ではClaude Code や Codex 、GitHub Copilot など、開発を支援するためのAIツールを使う人が増えており、使って作業をする社員はあまり意識しないかもしれませんが、導入する側としては「本当に会社にとって必要なのか」という視点が重要になってくる、とのことです。

一定規模の投資が必要になり、導入前と比べてどれほど違いが出ているのかを考える必要がある、といいます。株式会社ZOZOでは ChatGPT Enterpriseも全社員が利用しているそうです。

「AIは『勝手にコーディングしてくれる』という段階に入り、もはや開発者でなくても何かを作れる状態になり、上流から下流工程までAI活用が当たり前になりつつある昨今では、日常的にAIを使う人と使わない人の差は日々開いていくことも事実です。」
一方でAIを活用しきれない分野もあり、人が担う仕事も残っていきます。かつてコーディングは、手で書いていましたが、今は指示を出す仕事へと変わっています。「そのため従来の手作業が中心となるポートフォリオは意味を失いつつあります。」
「思いついたものをすぐに形にすることができ、作ることが容易になった分、『何を作るか』を決める力がより重要になり、AIの出力を正しく評価する力が必要になってきます。AIが可能にした『底上げ』に合わせるため、むしろ学ぶことは増えていくのも事実です。」
次に株式会社ZOZOでの事業について解説してくださいました。

株式会社ZOZOの事業について

ZOZOが提供する主なプロダクトとしては、ファッションECの“ZOZOTOWN”、ファッションコーディネートアプリの“WEAR by ZOZO”があり、ZOZO独自の計測技術関連では、高精度な足の3Dサイズが計測可能な“ZOZOMAT”、肌の色を計測する“ZOZOGLASS”、3D計測用ボディースーツ“ZOZOSUIT”を活用した“ZOZOFIT”などを展開しています

ZOZOTOWNとブランド実店舗、ブランド自社ECをつなぎ、ブランド実店舗の売上を支援するOMOプラットフォーム“ZOZOMO”やZOZO独自のAIが「好みの雰囲気」の相手を紹介するマッチングアプリ “ZOZOマッチ”といった新サービスもあります。

ZOZOのエンジニアの領域

全従業員は1702名(2025年4月末時点)。職種比率ではエンジニアが約27%、新卒エンジニアは21名採用しており、合計でエンジニア数は584人(2025年4月末時点)です。エンジニアの成長支援・ワークスタイルサポートに力を入れています。
幅広い技術を扱っていることから、社内技術についてすべてを把握している人は限られ、研修やエンジニア同士の交流により知識を補っています。カンファレンス参加補助などの制度もあり、それぞれのスキルアップを支えています。

ZOZOの計測技術によるプロダクトの具体例“ZOZOGLASS”と“ZOZOMAT”

講義の中では“ZOZOGLASS”と“ZOZOMAT”が配布され、実際に生徒が体験する機会が設けられました。

“ZOZOGLASS”に関しては、肌の色を計測するツールで、たとえばファンデーションの色をレコメンドすることに使われます。計測する環境の照明等のばらつきによる色の変化を補正したデータをもとに表示されます。イエローベース・ブルーベース、春夏秋冬のタイプ分類などが行われ、裏側では肌測定データ、ヘモグロビン(赤み)、メラニン(濃さ)の分析など多くの機能が動いています。
アプリを開き、肌の色を計測する、という形で、顔を自撮りのように、上を向いたりすると計測ができるというものです。

そのほかに“ZOZOMAT”は、マット全体に施されたドットマーカーをスマートフォンのカメラで360度撮影することで、自宅にいながら簡単に高精度な足の3D計測が可能で、靴選びをアシストする機能があります。

これを子ども向けに最適化した“ZOZOMAT for Kids”では、両足で計測できるようになっています。

生徒たちからの質疑応答にも答えていただきました!

ここでは生徒たちから挙がった質問をいくつかピックアップしてお伝えします。

Q1:AIの発展によってプログラマーの仕事が変わってくる中で、プログラミングのことをどれくらいまで知っていればよいのでしょうか?深く勉強するのがよいのか、広く勉強するのがよいのか…。

A1:何でもできる人はいますが、そんな人は一握り。大多数の人は一つの言語ができるようになり、その一つを身につけていれば、複数の言語を学んでいくことは難しくないので、まずは1個を極めることが大事です。

もちろん全部を知る必要はないが、どう検索すれば、どう調べればそれにたどり着けるのか、であったり、判断自体はすべて自分でしなければなりませんが、最低限のことは理解しておくことにより、その感覚がわかるようになると思います。

Q2:コードを書くことは、現在どのくらいAIが行っているのでしょうか

A2:AIを使っている人は、本当にたくさん使っています。うまく使っている人は、ある程度の仕様を決めておき、AIが理解しやすいように入力すれば、テキストが戻ってきます。AIは怖がらずに積極的に使っていれば、使いこなせるように慣れてきますし、イメージしやすくなるのではないかと思います。

そのほかにも「AI時代で必要なプログラミング以外の能力、例えば決断力や判断力などを養う社内研修などはありますか」という質問もありましたが、諸星さんからは「特にそういうことはやっていません。場数を踏まなければいけないことはあります。」とのご回答。

バンタン在籍中に業界の動向をキャッチアップしたり、専門技術を習得したりすることは大事になる一方で、就職後に社会人として現場での経験によって、日々身につけていくということもまた大切なことなのでしょう。諸星さん、ありがとうございました!

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